【連載】webバイク小説「桜の街を旅する -岩手県北上展勝地-」第二話

前回記事:【連載】webバイク小説「桜の街を旅する -岩手県北上展勝地-」第一話

そろそろバイク開きが近い時期になってきましたね!
と言っても今はまだ爽快に出かけられるほど暖かくはありませんね…。待ち遠しい!
この小説を読んでいるとなんだか感情移入してしまって自分もツーリングに行っているような気持ちになります笑。
では、桜の街を旅する -岩手県北上展勝地-第二話をどうぞ!

北上展勝地へ

再びW800を走らせ、盛岡を過ぎた。

メーターの針はずっと、3千回転から
4千回転付近を差している。

低速のトルクが強い。
ビリビリとした振動が売りのバイクだ。
特にこのあたりの回転数は実に心地がよい。

エンジンの回転数と、自分の気持ちとが
シンクロしているような、独特の気持ちよさだ。

高速を流すのにはもっと
気持ちの良いバイクもたくさんあるだろう。
けれども、下道を中心に走る
僕のツーリングスタイルには
W800のようなバイクが
ちょうど良いと思っている。

北上江釣子I.Cを降りたのは、
午前8時半過ぎだった。

そばにあったコンビニの
駐車場にW800を停め、
タンクバックから
ツーリングマップを取り出した。

北上展勝地は、僕が今降りた
国道107号を西に向かえば
もう目の前のようだった。

展勝地まで1キロという案内看板を
見たあたりから、すでに渋滞していた。

両足を地面について、
流れが少しでも進むのをじっと待った。

あまりにも進まない。
ギアをニュートラルに入れて左手を離した。

そういう時に限って、
前の車が進んだりするものだった。

小さく咳払いをしてギアを1速に入れた。

北上川にかかる橋を越えても
なお、渋滞は続いていた。

地球の向こう側まで続いていそうだった。

しばらくすると、
駐車場の誘導員が走ってきた。
僕はヘルメットのシールドを上げて顔を向けた。

「展勝地を見学ですか」

「ええ、そのつもりでしたが」

「満車になってしまいましたが、
停められるスペースがあります。どうぞこちらへ」

ラッキーだ。

僕は車の脇を通って駐車場へ入った。
さっきからずっと僕の前にいた
車のドライバーから、
羨ましそうな視線を感じられた。

「あそこです。
バイクがたくさん停まっている
場所に置いてください」

誘導員が指示棒を差す先を見た。

ざっと、10台以上のバイクが停まっていた。

「駐車料はいくらですか」

「バイクは無料ですよ」

またまたラッキーだ。

すっかり良い気分になった。

誘導員にお辞儀をし、駐車場を快走した。

W800も、気持ち良さそうに
低い排気音を上げた。
 

駐車スペースに停め、
ライダースジャケットと
オーバーパンツを脱いだ。

さすがに渋滞の中では、
着込んでいた装備も逆効果で、暑すぎた。
だからジャケットを脱いだだけでも、
春風が涼しく感じられた。

装備一式をサイドバッグに入れ、
北上展勝地の中へ足を進めた。

長い並木道を歩く


入り口で手渡されたパンフレットに、
北上展勝地の詳細が書かれていた。

北上川沿岸にある公園の俗名が
北上展勝地。

樹齢八十年以上のソメイヨシノが
約2キロにわたって桜並木を
つくっている。

一般にソメイヨシノの寿命は
60年と言われているので、
樹齢80年を越すソメイヨシノの
並木は珍しい、とのことだ。

桜の樹の数は約1万本。
そして10万株のツツジがあるらしい。

なんだかすごい規模だ。

感心して辺りを見回した。

人々の雑踏に混じって、

何やら鐘のような音が耳に届いた。

何だろう。と思いながらも足を進めた。

少し曇り空になってしまったが、
そこは桜のトンネルだった。

桜があるというだけで、
曇り空は「花曇り」
なんて粋な呼び名に変わる。

うすいピンクと白の花弁が、
多くの人々の目を楽しませていた。

鐘の音。近づいてきた。

本当に、何の音だろう。 
気になって足を止め、
音がやってくるのを少しだけ待った。

音の主は、馬だった。

人々を乗せた観光用の馬車が、
時々、ブルルと鼻息を荒げながら、
目の前を通り過ぎていく。

僕はカメラを向けた。

桜のトンネルに馬がいる。

ここにしか無い、面白い光景。

これだけでもう、
十分にこの地を楽しめていた。

続く………

次回記事:2016年3月7日 【連載】webバイク小説「桜の街を旅する -岩手県北上展勝地-」最終話

ABOUTこの記事をかいた人

張山 和希アイコン

北東北を中心にツーリングをし、紀行文やバイク小説を細々と執筆している。 八重洲出版モーターサイクリスト誌の連載をきっかけにライター活動を始めた。 オンロードだけでなく、林道ツーリングやオートバイキャンプなど、色々やっている。 愛車はカワサキW800。