「立ちごけしちゃった!」そんな時に読んでほしい、バイクと一緒に傷ついた己の心の立て直し方
教習所で一番最初に習うのは、バイクの起こし方です。
「膝を入れて、前転しちゃうくらいの角度で、思い切り力を加えて!」確かに役に立ちます。
ですが教官は大事なことを教え忘れています。
それは、心の起こし方です。バイクを倒して、起こしたは良いものの、ライダーの心が起き上がっていません。
そこで今回は、教習所、公道、とバイクを倒しまくってきた私が生み出した、心の立ち直り方をお教えいたします。
初めてコけてしまった
私が初めて立ちごけを経験したのは納車初日――
ではなく、キャンプにも慣れ自分の能力を過信していた頃でした。
ご覧のように積載がモリモリで、出発前、センタースタンドを勢いよく下ろしたら…。
えっ、ちょっとまっ、う、うわっ、うわぁぁ!
200kg近くある重たい車体を支えられるはずもなく、私の愛しのバイクは、硬いコンクリートの地面に倒れていったのです。
やっちゃった。やった。
力なく横たわるバイクを起こそうと近づくと、視界の端に真っ二つに折れたブレーキレバーを見つけました。
ああ、直さなきゃ。でも、部品がない。いやそれより先に起こさなきゃ。
焦った私は、あろうことか、積載モリモリ激重バイクをそのまま起こそうとしました。
当然起き上がることはありません。
自分のバイクも起こせないなんて、とパニックになっているところを通りすがりの方に助けて頂き事なきを得ました。
焦りまくっていた
傷ついた車体を眺めながら「今日無理絶対行かない」といじけている時、私は気づきました。
ツーリングバック取り外してから起こせば良かっただけじゃん。
そうです。車体が重いなら、重たい部分を取り除けばよかったのです。
どうしてこんな簡単なことに気付けなかったんだろう。
そう考えた時、自分が今まで無いくらいに焦っていたことを思い出しました。
ではどうすれば焦らないで済むだろうか。
私は考えに考え、とある結論を導き出します。
笑って状況を客観視するよう努力する
教習所では「周囲を確認し、素早く起こして、車体を眺めてから道路に復帰」と教えられます。
もちろんそうすることが理想です。ですがどうでしょう。倒して、焦って、パニック!
そんな時に冷静に周囲を確認できますか?
私にはできませんでした。
だから笑います。
「何こけちゃってださっ!」
その一言で、現状を顕微鏡を覗くように客観視することができ、自然と焦りを遠ざけることができます。
そうして画像のようにバイク張り付いて、よっ、こい、せっ!
力の抜けた体でいとも簡単に起こせちゃいます。嘘みたいでしょう?
起こしたら安全な場所に移動しちゃいましょう。次なるミッションのためです。
バイクとコミュニケーションを図って心の傷を癒す
笑いに笑って、じゅうぶんに客観視し、無事バイクを起こすことができました。
では次は何をすればいいのか。
それは、バイクとの会話です。突然ですが、皆さんはバイクと会話しますか?
しません。それはいけませんね。ちなみに私は、します。
「かぁわいいぃなお前なぁ♡」
「ご機嫌斜めなのかなー?」(エンジンのかからなかった車体をさすりながら)
「いつもありがとうございますやでホンマに」
時に犬や猫のようなペットとして、時に推しのアイドルとして、時に頼れる兄貴として、バイクを愛でて、応援して、頼っています。
そんな大切な存在が倒れてケガをしたら? 黙っていられる人なんていないはずです。
むしろいつもよりたくさんの言葉を掛けるでしょう?
ですから、立ちごけした際、私はバイクとのコミュニケーションをいつもより多めにします。
声をかけると車体の確認にもつながる
とは言えバイクは工業製品で単なる機械です。いくら話しかけても返答なんてあるわけがありません。私だってバカじゃないからそのくらい分かっていますよ!
それでも声をかけるのは、壊れた場所がないかチェックするためです。
①「大丈夫?」(周囲の安全の確認)
②「またこんなに盛大にコケちゃってまったく~」(ガソリンが漏れたりしていないか)
③「痛いところある? 骨折れたりしてない?」(レバー、ウィンカー、シフトペダルが折れてないか)
何ということでしょう。
ふざけているとしか思えなかったバイクとの会話が、安全な道路への復帰手段に早変わり。
「大丈夫だよ。先を急ごう」バイクがそう言ったら再出発です!
いったん現実逃避
再出発して一番気を付けなければならないのは、コケてしまった、と引きずることです。
意識がどんどん内側に行ってしまい、「こんなとこでコかすなんて…なっさけない」「私なんかに買われたばっかりに、可哀想」
なんて思ったりしますよね。うん。絶対そう。
すると、本来注意すべき交差点、もしかしたら信号も見逃してしまうかもしれません。
そんなときに有効なのが没頭です。
没頭してとりあえず乗り切ってみる
「唯一ネガティブな時間から逃れられる人生の隠しコマンド、それが”没頭”である」
これは『ナナメの夕暮れ』というオードリー若林が書いた本からの引用です。
没頭すると、その後、真正面から対峙していた事実を上から見たり、横から見たりできるようになります。
ツーリング中であれば景色、そうでなくてもゲーム、テレビ、TikTokなど、世界にはたくさんの没頭コンテンツがあります。
それらを消費できるだけ消費して、立ちごけした事実を記憶から一度追い出してみるのはどうでしょうか。
ちなみに私はアイドルのMVを10回連続で見て没頭し、予備のブレーキレバーを買いに行った勢いで交換しちゃいました。
※すぐに直すのが最善手なのかもしれません。分かりません。私は現実逃避が好きです。
強烈な思い出になる
motobeの記事を書く佐藤さんにアドバイス頂いたときに、コケたときの思い出って自分でもびっくりするくらい鮮明に覚えてるな、って気づきました。
キャンプ場で派手にコケた時、砂利上で秒針のようにコケた時、誰もいないあぜ道でコケた時。
へっ、へへっ、と口角が引きつる程度には笑えます。
ですから現在進行形でバイクを倒してしまった画面の前のあなた。
それから立ちごけ予備軍である全ライダーの皆様。
笑う、コミュニケーションを図る、没頭する、の過程を是非参考にしていただければ幸いです。
「傷へこみ 眺める時間 また増えて」(どや顔)
この記事をかいた人
20歳大学生。愛車はSR400です。主にキャンプツーリングと近所の徘徊にバイクを使用しています。