【連載】webバイク小説「春待ちライダー」第二話

前回記事:【連載】webバイク小説「春待ちライダー」第一話
前回から始まったバイクweb小説「春待ちライダー」
第一話は気になるところで終了しましたが「呪いのカーブ」とは一体何なのでしょうか?
第二話も目が離せません!

呪いのカーブとは

「ちょっと、その話は聞きたくないよぉ…」
娘は何か忘れ物でも取りに行くかのように、奥へと引っ込んでしまった。

しかしオヤジは、久々に切り出したこの話を
久々にしゃべり倒したいようだ。

「そうそう。あのカーブは のろいのカーブ って
昔からわりと有名な場所なのさ。」

「呪いのカーブ…そこで、何があったんスか?」

待ってました、と言わんばかりに、オヤジは怪しくニヤつき始めた。

「あのな、昔な、ある少年がな、そこをバイクで走っていたらな、」

「待て、その話はやめておけ。」
俺に一時停止され、オヤジは口を開けたまま機能停止している。

「こいつも、コケて落ち込んでいるんだ。
これ以上に恐怖を与えちゃあ、さすがに可哀想だろう?」

オヤジは、ばつが悪そうにしぶしぶ口をつぐんだ。

話が終わったのを察知したのか、娘は冬眠明けの
シマリスのように奥から現れた。
が、青年の頭の上には大きなハテナが
浮かんでいる。

「もし良かったら、家まで乗せていこうか?」
暇な俺は、青年を家まで送り届けることにした。
聞くと、家はこのバイク屋からさほど遠くない。
車で15分といった場所だ。
帰宅ラッシュで道が混雑している時間帯だから、
3割増しで遅くなりそうだが。

「なんだか、やっちまった、って感じッスよね。」
青年は車の助手席で、ひたすら苦笑いをしていた。
バイクで転んだショックが拭いきれないのか、
それとも気分を紛らわしたいのか、
訊いてもいないことまで言い始めた。

「昨日、本屋でバイク雑誌を立ち読みしてたんスよ。
そしたら、信州の特集をやっていて、同じ2月なのに
南の方は、もうバイクに乗れるんだなーって、羨ましくなったんス。」

ほうほう、と俺はハンドルを握りながら頷いた。
そうか、毎日雪を眺めているから忘れていたが、
雪に覆われた世界は北国だけだったな。

「なんだか自分も、今朝きゅうに、バイクで通勤したくなったんスよ。
ほら、今朝は雪も少し消えて、アスファルトが丸見えで。
あ、これなら行けるわー、って。」

「たしかに、2月にしては暖かい日だったからな。」

「そうッスよね。で、普通に会社までバイクで行けて、
ヘルメット持って入って行ったら、同僚にすごい! もうバイクで
来たのか!? って絶賛されて。」

ふむふむ、と俺はハンドルを切りながら頷いた。
交差点の角はガソリンスタンドになっていた。
レギュラーもずいぶんと値下がりしたんだな、と横目に見た。

「いい気分になって、帰り道、つい飛ばしちゃったんスよね。」

「急に加速したら、離陸して飛んでいっちまうぞ。」

「そしたらあそこの緩いカーブで、一瞬滑って、急いでブレーキ
かけたんスよ。そしたら右側に倒れて、ザーっと…」

「滑走路を外れた、ってわけか。」
青年はまた恥ずかしそうに笑った。

目の前の信号が黄色から赤に変わり、俺は減速をして停まった。
ラジオから流れる夕方のニュースでは、首都高速のカーブで
トラックが横転した、と緊迫した様子で伝えていた。

と、青年は何かを思い出したかのように、こちらを見た。
「あの、さっきバイク屋さんで話してた、あそこのカーブ…」

遠くの家の灯りでも探そうかと、俺は外を眺めた。
が、青年は構わずに続ける。
「呪いのカーブって、何があったんスか?」

「のろいのカーブ の話、聞きたいかい..?」

「世にも奇妙な物語」のテーマでも流してやろうかと思った。
が、俺のデッキのハードディスクには収録されていない。
静かに手を伸ばし、デッキのボリュームを絞った。

「ですね。ここまで聞いたら、結末まで聞きたくなるッス。」

俺は一つ、軽く咳払いをし、静かに口を開いた。

続く…。
次回記事:【連載】webバイク小説「春待ちライダー」第三話

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張山 和希アイコン

北東北を中心にツーリングをし、紀行文やニュース記事を細々と執筆している。 オンロードだけでなく、林道ツーリングやオートバイキャンプなど、色々やっている。 北海道ツーリングの常連で、そこそこ詳しい。愛車はカワサキW800&KLX125。