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初の北海道ツーリングは忍耐との勝負?!バイク歴1年の大学生ライダーが北海道ソロツーへ行ったらこうなった〜後編〜

前回記事:初の北海道ツーリングは忍耐との勝負?!バイク歴1年の大学生ライダーが北海道ソロツーへ行ったらこうなった〜前編〜

バイクを納車してちょうど一年の私は、今までのキャンプツーリングの総決算として、ライダーの聖地北海道に行くことを決めました。

おすすめスポット、おすすめルート、おすすめの食事。

どんだけおすすめされんだよ! 俺は自由に旅がしてぇんだよ! そう思った私から見た北の大地をお届けする後編です。

レッカーされる光景を目の当たりにして学ぶ

旅の出会いは一期一会です。連絡先を交換するわけでもなく、かといって全くの他人というわけではない。

特に道の駅ではその傾向が強く、「どこいかれるんですか?」と話しかけてもらうことも多いです。

私はその絶妙な距離感が好きなのですが、絶妙な距離感であるがゆえに困った出来事をここに記しておきたいと思います。

道の駅摩周温泉で休憩をしていると「もしかして昨日羅臼のキャンプ場にいらっしゃいました?」と話しかけられました。

アメリカンバイク、年季の入ったツーリングバック、渋いジャケット。その装いを見て私は気が付きました。

「あ! 昨日のバイクの方!」

何という奇跡でしょうか。
前日泊まったキャンプ場にいた渋めライダーの方と再会したのです。
どこに行って、どこが綺麗だったか。そんな話をしばらくした後別れ、私は足湯に向かいました。

さようなら、おじさん…。


さてそろそろ出ようかという頃、渋めライダーの方が何やら慌てていました。

「どうされたんですか?」と聞くと、「いやぁ、バッテリー上がっちゃったみたいで」と積んでいた道具を次々に下ろしていきます。

「はあ」とどうすることもできない自分を情けなく思いながら「ま、まあ、山の中で止まるとかじゃなくてよかったですね」と当たり障りのないことを言いました。

とはいえ何か出来るわけでもなく、しばらくgooglemapとにらめっこしていると、

「いやぁ、残念です。僕のツーリングはここで終わりです」とおじさん。

見ると、巨大なレッカー車がけたたましいエンジン音を立てて道の駅に入ってくるではありませんか。

えええ!! おじさぁぁぁぁぁん!!!

アメリカンバイクが淡々と荷台に縛り付けられ、それを見つめるおじさんの哀愁を帯びた後ろ姿。
一枚の絵にして飾りたいくらいの光景に私は胸を打たれました。
絶対北海道を走り切らなくてはならない。そう決意し、もう一度足湯に向かったのでした。

冷静になった自分からの声:関西に住んでいると言っていたおじさんはどうやって帰宅したのでしょうか。イェーイ、読んでるぅ? バイクかっこよかったですぅ!

道東は難関だが張り合いのある場所

函館から北海道一周を目指すライダーにとって、一番の難関は道東だと私は思います。

なぜか。

それは、都市がなく、気候が寒いからです。

ご覧の通り、北海道という土地には黒で囲んだ部分にしか都会がありません。
ぎゅっと集めたら埼玉県くらいのサイズしか無いんじゃないかなと思います。
あっ、ここで言う都会とは、マクドナルドとネットカフェのある場所のことを指します。人口は関係ありません。

では、なぜ都会が必要なのか。

それは、万が一雨に降られた際に、安定した精神状態でいられるようにするためです。
雨風を凌ぎ、充電ができ、比較的安価。(コンビニのイートイン復活してくださいお願いします)

これは、帰宅してフォルダを整理しているときに見つけた写真です。

なぜ、こんな何でもないネットカフェで記念撮影をしたのでしょうか。

写真の撮られた場所と時間を見てみると、「帯広市 5:50」と書かれています。
あ!
その瞬間、失われていた記憶が次々に蘇ってきたのです。

「近くの」はケースバイケース

帯広に行く前日、私は羅臼オートというキャンプ場にいました。小雨の中、テントを片付け、もうほとんど気力(実際にはバイク)で野付半島へ観光に行きました。

海の上を細々と続く遊歩道は、先に進めば進むほど頼りなくなっていきます。どれだけ文明が発達しても、抗うことができない広大な海。

誰もいない海上で、美と恐怖が両立している空間が今でも忘れられません。

と、感動するのは良いのですが、問題は次の宿泊地までの距離です。ちなみに翌日の天気予報は雨。片付けのことを考えるとテント泊は避けたいところです。

じゃあネットカフェに泊まろう。
そう思って「近くのネットカフェ」とグーグルマップに打ち込みます。

に、に、に、にひゃくよんじゅうろっきろ!!!

「近く」という言葉の意味を揺るがされた瞬間でした。

近くのコンビニ、近くのマック、近くのカフェ。

日本中で検索されているであろう「近くの」検索の最長記録を更新しているでしょう。

よっ、ギネス記録保持者!

などと笑っていられるのも最初だけでした。道東の脅威は広さだけではありません。

8月だというのに10度前後にまで下がる気温の脅威もあります。

さらに、降る、雨。

長時間雨に打ち付けられた私は、ガクガクと震える体に熱を生むため、大声を出しました。

「道東のクソ野郎!二度と来ねぇからな!」

これが20歳男性のできる精一杯の抵抗だったのです。かなしい。

冷静になった自分からの声:帯広で入ったサウナ「森のスパリゾート」が忘れられません。料金は1300円と高価ですが、サウナの本場フィンランドを意識した「ロウリュ」、壁に埋め込まれた白樺、通称「ウォーリュ」などのオリジナリティもあり、大満足でした。タオルも使い放題だし、ウォーターサーバー飲み放題で、眼鏡の洗浄機まで置いてある徹底ぶり。教会もあるのでクリスチャンも安心。

苫小牧で電車に乗る、という貴重な経験

東北道で帰ることを早々に諦めた私は、苫小牧のネットカフェで一泊しました。
茨城行きのフェリーが18:00頃出発と、ほとんど丸一日持て余す形となってしまいました。

どうしよう、そんな風に思いながら唯一神googlemapに教えを乞うと、「しらかば温泉っていうところあるんやけど行ったら?」と啓示を授けて下さいました。

距離にして7.5km。バイクで数十分の距離にありますが、天気は雨。
前日にエンジン警告灯がついていたこともあり、なるべく乗りたくない。そんな時、一枚の写真が頭をよぎりました。

電車乗ってみたい★
そう思い苫小牧駅までの道のりを歩き始めます。

パスモをタッチしてはいけない

もうほとんどバスみたいな電車に乗り込み、一駅。
地元の高校生を余すところなく観察していると、降車の際、パスケースを運転手に見せていました。

へー、こっちの高校生ってパスモ使わないんだなァ、なんて鼻くそをむしゃむしゃ食べているのもつかの間、自分がとんでもない過ちを犯していることに気が付いたのです。

乗るとき、パスモタッチしちゃった。

私が乗車した室蘭本線の多くが無人駅でした。
しらかば温泉のある糸井駅も例外ではなく、降車の際には駅で購入したきっぷを運転手に見せる必要があったのです。

それなのに、のんきにパスモをタッチし、「全然電車来ねぇ(笑)」とヘラヘラしていた自分。何てバカなんだろう。
そう思って後悔しても、電車は止まってくれません。

「次は糸井、糸井、本線はワンマン降車を…」

さあどうしよう。窓を割って逃げ出そうか。運転手を脅して列車をジャックするか。

危ない犯罪に手を出しそうになった頃、アナウンスが流れました。

「なお、ICカードをご利用のお客様は乗務員にお申し出ください」

よかった。よかった。浮かれてローカル線に乗り込んだバカな観光客であることを恥じながら、「あのぅ、パスモぉ、タッチぃ、しちゃってぇ」と切り出すと、運転手は慣れた様子で、「ああ、それじゃ紙書きますからちょっと待ってくださいね」とあっさりした対応。

きっと私のような浮かれ人間に慣れているのでしょう。テキパキと必要事項を記入した紙を渡してくれました。ありがとう。お兄さん。

冷静になった自分からの声:しらかば温泉はパチンコ屋の二階にあり、観光客向けというより、地元の方が利用するタイプのスーパー銭湯でした。からあげ定食を食べながら水曜ヒルナンデスを見たあの時間。もう死んでもいいなと思いました。

さんふらわあで迷惑をかける


予報通りの大雨が降る中、スマートチェックインを駆使し、さんふらわあという大洗行きのフェリーに乗り込みました。

衣服やアメニティなど必要なものを持ち、コインロッカーに貴重品を入れ、ツーリストと呼ばれる客室にどっしりと腰を下ろしました。
ちゃんと調べといて良かった~。てかカーテンで仕切られてて結構快適だな~。
そんな風に思いながら旅の写真を眺めていると、私の前にヤバめのおじさんが立ち止まりました。

「5T03…寝台3だから…」

独り言でかいなぁおいうるせぇよ、ったく自分の寝床もわかんないのかよ、これだから年寄りはな。

と、溢れそうになる悪態を何とか押し殺しながら私はスマホに意識を集中させました。すると、

「あの、座席、間違ってませんか?」おじさんが話しかけてきます。
んな訳ねぇだろよく見ろよこの5T03の表記をよ、と座席の番号を確認します。

「5T03 3」

あれ、俺間違えてね? 私は急いで手元のチケットを確認しました。

「5T03 10」


つまり、今自分が座ってるのは「5T03 3」で、持っているチケットは「5T03 10」
おじさんの持つチケットは「5T03 3」

…。

ごめんなさぁぁぁい。私が間違っていましたぁぁぁ。

「すいませんホントに」と脇にどっぷりと汗をかく私。
おじさんは「いいんですよ、全然、気にしないで」と紳士的な対応をしてくれました…。

前述したような悪口を心の中で言いまくっていたこともあり、必要以上に謝って私は「5T03 10」に座り直したのでした。

冷静になった自分からの声:消灯後、結構大きめの声で寝言を言ってしまい深く反省しております。おじさん、並びにツーリストに乗船した方々、大変申し訳ございませんでした。

北海道+辛い=楽しい

怖いのが、この一連の出来事を書き出してみる今の今まで割と忘れていたということです。
「北海道最高だった」
そんな風に言うライダーがいたらまず疑ってかかりましょう。泣きたくなるほど辛い体験が必ずあるはずです。

そしてその辛さにこそ、本当の魅力が眠っています。

この記事をかいた人

高野創太アイコン

20歳大学生。愛車はSR400です。主にキャンプツーリングと近所の徘徊にバイクを使用しています。

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