80年代グラフィティ 400その5 HONDA CBX400F
前回記事:80年代グラフィティ400その4 SUZUKI GSX400F
カワサキ、ヤマハ、スズキが4気筒出して、じゃあホンダはどうだったのかといえば、実は全然冴えなかったんです。
なんせこの頃ホンダの主力は2気筒のスーパーホーク3。
性能こそ良かったんですけれどエンジンは70年代に作った2気筒。「もういい加減4気筒出せや」なんて感じ。
でもこの当時、ホンダファンは皆「もう少ししたら絶対ホンダが凄い4気筒出す。
だからそれまでバイク買い換えないで我慢するんだ」なんて言ってたわけです。
ミドルクラスの王者 HONDA CBX400F
ホンダは他のメーカーが4気筒出すのを黙って見ていたわけじゃありません。
少し時間かかっても4気筒作るなら、絶対他に負けないヤツを作ろう、って頑張ってたわけです。
そして400cc4気筒としては最後に登場したのがCBX400Fです。
このバイク、ライバルがまったく勝負にならないほどの圧倒的高性能を誇りました。
何しろ、このクラス最速だった2ストモデル、RZ350と同じくらいの動力性能を発揮してしまったんだから大変です。
ハンドリングも素晴らしくてレースでも大活躍。
しかもコンパクトな車体で乗りやすくツーリングや街中でも疲れませんでした。
ツーリングからサーキットまでこなす万能選手。
デザインやメカニズムも凝っていました。
Xの字型にクロスしたエキパイやリンクを使ったリアショック、ディスクローターが外から見えないインボードディスク、ブレーキングでフロントフォークの沈み込みを抑えて安定させるTRACなど斬新な機構も満載。
大ヒットモデルとなったわけです。
それでもHondaの勢いは止まらなかった
ところがこの頃のホンダは血の気が多いもんで、CBXを出しただけじゃ止まりませんでした。
せっかく作って大当たりしたCBXを引っ込めてCBR400Fなんていう更に激しいモデルを発表したんです。
可変バルブシステムのREVを装備して58馬力と更にハイパワー。
400クラスでの王者の座を決定的なものにしようとしました。
いやぁ、この可変バルブシステム、凄かったですよ。突然エンジンの性格変わるんだもの。
雨のサーキットで走っていたらガツンとパワーが出て転倒しちゃった人がもいたもんだから、レースの人達は最初から4バルブにして使ってました。
このシステム、止まっているロッカーアーム(バルブを押す部品)に隣のロッカーアーからピンが飛び出して差し込まれるっていう、かなり過激な作り。
ところがCBXに憧れる人達は多くて「なんでCBX引っ込めたんだよ!!」なんて声がすごく、限定でCBXを再販することに。
当時からCBXの人気って凄かったんです。
なんで族車イメージになってしまったのか
この頃、暴走族の間で人気だったのはKHやGT380、Z400FXあたり。
Hondaの4気筒は優等生的な雰囲気のため人気はなかったんですが、暴走族って不思議なことにちょっと古いバイクに惹かれる習性があるものでCBXも発売中止になって数年してから暴走族の間で人気になったりしました。
全盛期、CBXの族車なんていたら指さされて笑われてしまうくらいだったんですけどね。
CBX400Fはどんなバイクだったのか
ミドルクラスのバイクの流れをガラッと変えてしまったバイクです。
しかもこのバイクのレース仕様が販売されて鈴鹿4時間耐久ロードレースは一気に盛り上がり、ライダー達の甲子園になりました。
テレビのスポーツ番組やバイク誌、ライフスタイル誌などはレーシングチームを結成してCBX400Fのレーサーで4耐に参加。
レースクイーンとして参加したタレントの女子達がレースに感動して涙を流す場面を見て多くのライダー達が「オレもレースに出て女の子と泣かなきゃ」と思いました。
とっても多くの人達の青春だったバイクです。
この記事をかいた人
二輪業界に長くいる、MotoBeのアドバイザー兼ライター。バイク全盛期を経験しており、現在の愛車はRZ250、Z1000、MACHⅢなど。